ウイスキーについて その1

お酒の知識

さあ今回からはさらに個別のジャンルについて見ていきます!

まずはウイスキー!

ウイスキーとは

「大麦麦芽や小麦、トウモロコシ、ライ麦、オート麦などのイネ科の植物を糖化・発酵させた醪  (モロミ)を蒸留し、その蒸留液を樽で規定の年数熟成させたもの」です。

もちろんウイスキーのさらに細かい種類(スコッチ、バーボンなど)により定義は細かく、時には法律によっても定められていきますが大まかにはこういったところです。

 製造工程としては、

①原料となる大麦などをミルで挽いて粉状にする
 ↓

②仕込み水を加えて熱し、糖化酵素の活性化による糖化を促進させる
 ↓

③糖化した液を冷まし、酵母を加えて発酵させる
 ↓
④発酵させた液体を蒸留する
 ↓
⑤蒸留液を樽に詰め、熟成させる
 ↓
⑥樽から瓶詰めし、出荷

こちらも全ウイスキーに共通する大まかな説明となります。
例えばスコッチなどは大麦の糖化酵素を活性化させるために水を加えて麦芽を発芽させ、そしてまた乾燥させる工程が①より前に入ります。

ウイスキーの種類

ウイスキーには生産の盛んな産地があり、それぞれで原料や製造工程が大きく異なります。中でも

・スコッチウイスキー(スコットランド)
・アイリッシュウイスキー(アイルランド)
・アメリカンウイスキー(アメリカ)
・カナディアンウイスキー(カナダ)
・ジャパニーズウイスキー(日本)

の5つは世界五大ウイスキーと呼ばれています。

それぞれについてごく簡単に説明していきます。

スコッチウイスキー

ウイスキーと言えばスコッチを思い浮かべる方も多いでしょう。スコットランドで製造、熟成、瓶詰めを行ったウイスキーです。大麦麦芽と酵母と水のみを原料とするモルトウイスキーと、その他の穀物を使用したグレーンウイスキーに大別され、一つの蒸留所の原酒のみで作られたモルトウイスキーをシングルモルトウイスキーと言います。そしてシングルモルトやグレーンウイスキーを複数混ぜたものをブレンデッドウイスキーと言います。発芽させた大麦麦芽を乾燥させるための熱源として泥炭(ピート)が用いられ、その薫香が付与されることも伝統的な製法のスコッチの特徴です。いずれの場合も新品でないオーク樽で3年以上熟成させないとスコッチを名乗ることができません。

主な銘柄 ジョニーウォーカー、バランタイン、シーバスリーガル(以上ブレンデッド)、マッカラン、ラフロイグ、タリスカー(以上シングルモルト)

アイリッシュウイスキー

 アイリッシュウイスキーはもしかしたら馴染みのない方が多いかもしれませんが、19世紀まではスコッチと並ぶ一大産地で、ウイスキー発祥の地としても諸説あるためスコットランドと争っています。アイリッシュウイスキー独特の製法で作られるポットスチルウイスキーや、3回蒸留を行うことで得られるライトな酒質が特徴です(多くのスコッチは2回蒸留。一方で2回蒸留のアイリッシュもあります)。

 1860年代のスコッチのブレンデットウイスキーの台頭や1920年前後のアイルランドのイングランドからの独立戦争や、直後のアメリカの禁酒法の余波により衰退して以降は長く雌伏の時を過ごしました。しかし21世紀になり、特にここ数年は蒸留所の復活・建設ラッシュには目覚ましいものがあり、アイリッシュの復権が各地で叫ばれています。

アメリカンウイスキー

  アメリカで造られたウイスキー全般を指しますが、真っ先に思いつく代名詞的な存在が「バーボン」でしょう。主にケンタッキー州で造られ、トウモロコシを原料の51%使用していて、なおかつ新樽で熟成させるという決まりがあります(さらに細かい規定が連邦アルコール法にて定められていますが割愛します)。他に有名なのが「テネシーウイスキー」。こちらは2022年時点の日本においてはほぼ「ジャックダニエル」と言い換えても良いでしょう(近年新たなテネシーウイスキーの蒸留所も多く建てられていますが、まだほとんど日本に入ってきてません)。バーボンの製法にプラスして、「チャコールメローイング製法」という、蒸留直後の液体をサトウカエデの木炭で濾過する工程を加えます。これによってより滑らかでマイルドな口当たりになります。なんかバナナっぽい味にもなるような気がします。

 蛇足ですがこの「ジャックダニエル」、スーパーやコンビニにも置いてあるような超超有名銘柄なので、その名はウイスキーにさほど興味のない人にも知れ渡るところですが、それがバーボンではなくテネシーウイスキーと呼ばれることはジャックダニエルの名に比べればあまり知られていません(もちろんお酒に詳しい人やプロの間では常識ですが)。そこでその知識を仕入れたばかりの人が「ジャックってバーボンじゃないんだぜ〜」とやってしまう場面をたまに見かけますが、それは誤りです。テネシーウイスキーはバーボンの法律的要件をすべて満たしているので、バーボンでもあります。ジャックダニエルの側でバーボンを名乗るかどうかは別ですが・・・

 それに付随して、バーボンはケンタッキー州産でなければバーボンとは呼べないと思っている方もちらほら見受けられますが、そんなことはありません。確かに発祥としては現在のケンタッキー州ブルボン(Bourbon=バーボン)郡であり、バーボンの生産数・量もケンタッキー州が随一であるものの、そこでなければならない決まりはありません。アメリカ産である必要はあります。

 上記のケンタッキー州のバーボン、テネシー州のテネシーウイスキー、それらの補完的な役割として造られるライウイスキーやコーンウイスキーなどが長らくアメリカンウイスキーを代表してきましたが、近年はクラフトビールの醸造所がウイスキー作りに進出するなどアメリカ全土に蒸留所が作られるようになってきており、ケンタッキー以外のバーボンや新たな製法や原料のウイスキーも珍しくはなくなってきています。

カナディアンウイスキー

 もしかしたらアイリッシュ以上に日本人には馴染みがないのがこのカナディアンかもしれません。アメリカの禁酒法時代(1920-33)に多くのアメリカ人がカナダからウイスキーを求め、さらにカナダ政府も輸出を禁じなかったため一気に地位を確固たるものにしました。ベースウイスキーというトウモロコシほぼ100%の非常にすっきりした味のものと、フレーバリングウイスキーというスコッチでいうモルトウイスキーのようなものを掛け合わせて造る「カナディアンブレンデッドウイスキー」が特徴。総じて五大ウイスキーの中では軽めの酒質。

ジャパニーズウイスキー

  さて我らがジャパニーズウイスキーですが、1918年に竹鶴政孝がスコットランドにスコッチの製法を学びに留学し持ち帰った知識がジャパニーズウイスキーの礎となっているため、製造工程や熟成の環境などもスコッチに準じています。

 日本人の国民性が反映されるものなのかはわかりませんが、非常に緻密できめ細やかな味わいがあると言われています。車や電化製品同様、欧米に追いつけ追い越せで成長してきたものが、いつしか世界のトップクラスと言われるようにもなりました。

 原料は仕込水以外の大麦やピートなどはほとんどを輸入に頼っていますが、近年は自家栽培や提携する国内の農場の大麦や地場のピートを使おうという動きも高まってきています。

 欠点は生産量の少なさ。土地もそうですが、まだまだ国内市場が狭いため、また安価なウイスキーは海外に出回るほどの人気がないため(なかったため)、スコッチのトップ蒸留所と比べると生産規模はかなり小さいです。シングルモルトで世界一の売り上げを誇るグレンフィディック蒸留所には28基のポットスチルがありますが、日本最大の山崎蒸留所は長い間12基しかなく、2013年にようやく4基を増設、それでも16基です。

 さらに蒸留所自体の数もスコットランドとは雲泥の差なので、ブレンデッドウイスキーの種類や生産量も多くありません。質は高いが量が圧倒的に少ない。このことが希少価値を生み、現在の日本の高級路線のウイスキーはかなりの価格高騰が続いているのが実情です。

 そんな中にあって世界各地と同様、2008年のイチローズモルト・秩父蒸留所を筆頭にクラフト蒸留所の設立が相次いでいましたが、2022年現在、ようやく厚岸、静岡、安積などの蒸留所のシングルモルトのラインナップが揃いつつあります。

さて五代ウイスキーについて簡単ながらも説明をしていたら結構長くなってしまいました。次回は五大ウイスキー以外のウイスキーについて。

世界で一番売れているウイスキーとは?

えー!なにそれ知らない!! むしろ上位が全然無名!

これって一体どういうことでしょう。乞うご期待!

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