「老害」と言われないために

バーについてその他

昔からある言葉だとは思いますが、とりわけ昨今度々話題になる「老害」という言葉。

なかなかひどい言葉だと思いますけどね・・・老いるのは避けられないのにそれが害となるなんて・・・。そんなことを言っても明日は我が身。そうなってしまわないためには。

「老害」の特徴

 色々なことが言われていますが、私が思う特徴は

「自分の積み重ねてきた経験が、下の世代(=これからの世界)でも当たり前に通用すると思っている。そしてその自覚がない。つまり盲目的にそう思い込んでいる

ということです。この経験とは成功体験であったり苦労した経験であったりしますが、いずれも本人は貴重な経験だと思っていて、だからこそ押し付けがましくなることが老害と言われることにあたります。

 どうしてそうなってしまうかといえば、「最新のものを学ばなくなる」からです。

学び続ける大切さ

 「学ぶ」というと、子供の頃は両親や学校の先生から、社会に出れば先輩や上司からと、常に「年上の人間」から知識や知恵がもたらされるものでした。しかし社会にでて年齢と経験を重ね、次第に「年上から学ぶ」ことが減っていき、自分が年長者となったため「年下の若者に教える」という立場の逆転が起こります。そうすると自分が長年培ってきたことを「正しいこと」として教えなければならない(これは錯覚ですが)し、若者側も「正しいこと」として受け取ったり、受け取らされたりします。

 そこで若者側から見たとき、その「正しいこと」が時代にそぐわないトンデモな内容だった時、「老害」が生まれます。もちろん若者からみて都合の悪い意見をなんでもかんでも老害とするのは無理ですが、たとえば最近の若者はスマホに慣れすぎてPCが使えないというときに、もしPCでの作業よりもスマホの方が効率よく仕事ができるならばPCをゴリ押しすることはできないと思います。

(※現在ですと文章作成などの作業はPCに分があるように思いますが、音声入力の精度が上がれば書きたいことを音読していく方が早くなるかもしれませんね)

 

 学ぶ立場から教える立場へ。その立場の逆転の過程で、多くの人は学ばなくなっていきます。積極的に教えてくれる人が少なくなっていきます。教えを請うのもプライドが邪魔したりしますし、年齢だけでなく役職などの社会的地位があがればあがるほど、他人に教えは請いづらい。そうしているうちに、自分に物事を教えてきた「年上」はどんどん減っていきます。

 それでも新しいことを学び続けなければ、古い常識のまま、今の時代にはトンチンカンなことを上から下に発信することになってしまいます。

 ならば、下の世代に教えを請えばいいのです。遠慮なく堂々と。わからないものを正直にわからないとし、わからないままにしないのが大事であることに、年齢は関係ありません。新しい情報は新しい世代が持っています。若者ですので、その人自身にはどうしても若者ゆえの拙さはあるでしょう。しかし新しい情報や手法は拙いでしょうか?年上世代の培ってきたものの上に築かれた、より優れたものではないでしょうか?それをよく知らないものだから、新しくて実績がなく不透明なものだからと相手にしないのでは自身の成長がないのです。老害の始まりです。

バーは、違う世代との交流の場

 バーの常連客には「老害」っぽい方はあまり見られません。お仕事の場ではどうかはわかりませんが、少なくともバーにいるときはそうですね。「老害」というのは主には「目上の立場に立ち続けることで価値観が固定される」ことで生まれるものだと思いますが、バーにおいてはせいぜい年長者として敬意が払われるだけで、それ以外の社会的地位はあまり関係ありません。年長者も若者もあくまで対等の関係です。したがってあまり利害を気にせずに話すことができます。知らないことを知らないといって質問しても、社会的立場が揺らぐことはありません。

 そして若者にとっては普段は上司くらいしか接点のない年長者と対等に接することができるチャンスでもあります。もちろん年長者に対する敬意は忘れずに。

 お互いに相手に対する敬意を持って接すれば、この世代の人はそうやって育ったんだ、だからこういう価値観なんだと、相手に対する理解の土壌が生まれます。

仲介者としてのお酒とバーテンダー

 世代間の溝を埋めるものに、お酒があります。なんといっても有史以前から存在するものなので、現在生きている人の世代間の溝などお酒の歴史に比べれば大したことではありません。もちろん、世代によって知っているお酒に偏りがあったり流行は違います。でもすぐに埋められるものです。「自分の若い頃には焼酎が流行って・・・」といったときに「は?焼酎?なんすかそれ?聞いたことないんすけど!」とか「今時焼酎ってダサくないすか?」とはならないからです。数多くある選択肢の中からどれを選ぶことが多かったか、というだけの話です。

  それにお酒の歴史ならバーテンダーが知っていますので、昔と今の流行りを比較したりすることで、会話の橋渡しをすることも可能です。ハイボールブームなどが好例でしょうか。

 ※現代では2008年頃からのサントリーのキャンペーンにより角ハイボールが大ブレイク、今は定着した感がありますが、昭和30年代にもトリスハイボールが一世を風靡しました(「トリスを/飲んで/Hawaiiへ/行こう!」のキャッチフレーズはこの年の流行語)。

 ※それどころか、2008年の角ハイボールのコマーシャルは小雪がやってたこと、今の20代前半くらいは知らなかったりして・・・(汗)

 こうしたお酒の話題を皮切りに、お互いの世代の溝を埋めていけば「老害」という言葉はなくなっていくと思います。「老害」になるのは主に年長者ですが、「老害」と決めるのは相対的な若者です。だから若者も上の世代の特徴や考え方を知ることで一様に老害老害言うのではなく、うまくつきあっていく方法も見出せるようになるはずです。そしてその中で自分達の価値観も徐々に理解してもらえるよう努めていくと同時に、次第に年長者になっていくのですから、新しい世代の価値観やテクノロジーを学び、ブラッシュアップしていくことで上の世代にも下の世代ともコミュニケーションが取れる、または世代間の通訳をするような役割も持てることでしょう。

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