バーとお酒の入門講座

バー初心者の方を対象に、バーならではのマナーや楽しみ方、お酒に関する基本や雑学、豆知識を書いていきたいと思います。バーに興味はあるけれど、何だか最初の一歩が踏み出せない、そういう方の一助になれば幸いです。

ジンについて

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 さてクラフトビールとクラフトウイスキー、2つの前置きがありまして、

クラフトウイスキーについて - バーとお酒の入門講座

クラフトビールについて - バーとお酒の入門講座

ようやく今流行りのジンです。

 

クラフトビールからクラフトウイスキーの流れを経て、醸造所〜蒸留所が多く各地に建設されてきたのはもちろんですが、それ以上にクラフト〇〇が流行するうちに市場の目が既存の大手メーカーが造ってきた慣れ親しんだブランドよりも、面白い個性的な商品を追うようになりました。そのような状況下で今のジンブームは起きています。

 前々回のクラフトウイスキーの回の最後に書いたように、ウイスキーが熟成を終えて商品化できるようになるまでの間をしのぐ、すぐ売り上げを立てる手段としての商品がジンです。

 ワインなどとも違って収穫したての果実ではなく貯蔵された穀物や草根木皮から作るため、一年を通して原料が得ることができ、そしていくつかの例外はあれどジンには熟成期間が必要ありませんので休むことなく生産・出荷が可能なのです。

 

そもそもジンとは

 さてそんなジンですが一体どういうものなのか。現代のものはジャガイモなどの穀物を使用した蒸留酒を作り、そこにジュニパーベリー(杜松の実、ネズの実)を主とした各種の草根木皮を浸して成分を抽出し、更にもう一度蒸留して作るスタイルが主流です。

 最近はワイングラスやそれより小ぶりなテイスティンググラスでストレートで飲むスタイルも流行していますが、一般的にはジントニックやジンフィズ、あるいはカクテルの王様マティーニのベースとしての認知そして消費が多いかと思います。しかしそれが一体どういうものなのかということをプロ以外できちんと知っている人はさほど多くないように思われますのでそれをお話ししたいと思います。

ジンの起源と歴史

 ジンの歴史は17世紀のオランダにさかのぼります。1660年、オランダのライデン大学のシルヴィウス教授が解熱・利尿剤として開発したジュネヴァと言われる薬用酒がその起源と言われ、一般人にも広まって行きました。

 (※但しそれよりはるか以前の11世紀頃にイタリアの修道士がジンに必須のジュニパーベリーを使用した蒸留酒を作っていたという説もありこちらも有力です)

 それからほどなくしてイングランドで1689年に名誉革命が起こり、時のオランダ貴族オラニエ公ウィレムがウィリアム3世としてイングランド王に即位したことがきっかけで、オランダの製品であるジュネヴァがイングランドに伝わり、ジュネヴァを縮めてジンと呼ばれるようになりました。

 そして19世紀に入り1831年アイルランド人のイーニアス・コフィーによって開発された連続式蒸留機が実用化されると、それがジンの製造にも応用され、アルコール度数が高くドライなものが作られるようになります。こうして現代までジンの主流である「ロンドン・ドライ・ジン」の原型が形作られました。

 そこからは革命的な変化はこれといって見られず、各メーカーが草根木皮の種類や蒸留回数などに変化をつけてそれぞれの個性を出しています。いわゆるボタニカルと呼ばれる薬草や香草の他に、キュウリや薔薇、緑茶、中国茶、はたまたグレープフルーツなど果実の皮など、実に様々な原料が使用されています。

 

 20世紀に入るとアメリカでカクテル文化が花開き、ジンは優れたカクテルベースとして前述のような王道カクテルに使用されることとなります。そして21世紀に入るまでジンはウォッカと並んでNo. 1カクテルベースのひとつとして誰もが知っているお酒になったと言ってよいでしょう。

現在と、これからのジン

 そして21世紀、今回のジンブームで注目されているのが前述の「ストレートで常温で飲む」という味わい方です。各社のクラフトジンは個性的な味わいのものが多いのでカクテルベースとして何かを混ぜて、あるいは何かで割って飲むよりはそのままで飲んだ方が本来の魅力が損なわれないということです。もちろん従来よりストレート、あるいはロックでジンを嗜む方は一定数いましたが、その場合は冷凍庫でキンキンに冷やしたものが好まれる傾向にありました。その方がジンの持つドライさが際立ち爽快感があったのです。しかしこれは全てのお酒に言えることですが、温度が下がると香りはあまり立ちません。温度が上がってくるにつれて香りが立ちのぼり、個性が表現されます。

 従ってそれにふさわしいグラスがより香りを引き立たせる効果のあるワイングラスやテイスティンググラスということです。私もまだそれほど経験はないですが、常温のジンをワイングラスで飲むのは非常に楽しいです。というのも、ワインやブランデーはブドウ、ビールとウイスキーは大麦などイネ科植物、ラムはサトウキビ、テキーラは竜舌蘭、というように主なお酒は水を含めても原料が片手で数えられる程度なのですが、ジンは何十種類も、しかも一風変わった原料も数多く使われていてその香りが閉じ込められているのですから、非常に複雑な香りと味わいを楽しむことができます。ワインやウイスキーも樽熟成や蒸留の過程で本来の原料にはない香りを得ることができますが、やはり原料由来の香りというのはジンならではのものだと言えます。

 ブームとはいえ、今のところこの飲み方は一部のジン好きの方しかしていないと思われますが、香りを立たせるといえばウイスキーで行われる「加水」(あくまで「水割り」ではなく、一滴〜お酒と同量の範囲で水を足す)という方法がありますので、そういった楽しみ方もこれから増えていくのではないでしょうか。また香りが重視されるということで、それと合う料理とのペアリングなども発案されていくことでしょう。果物が使われている場合はその果物を食べながら、なども良いですね。

 

 バーテンダーとしては、香りをストレートが流行とはいえ、あえてクラフトジンを使ったカクテルを研究していきたい気持ちです。流行はどうあれ、いつもチャレンジ精神は忘れずにいたいものですね。

先日バーで見た光景(奢り方、奢られ方)

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 ジンについて書いている途中でしたが、先日のお休みにとあるバーに行った時に目にした光景が印象的でしたので本日はそれについてです。以前バーのマナーについて書いたことに当てはまることが多かったので。要はツッコミどころ満載の案件に出くわしたということですね(苦笑)

  私が入店した時そのバーは満席近くで、私はカウンターの中ほどの空いているひと席に通されました。左隣に男女のカップル?右隣に常連さんグループ。

 ひとりで訪れたため、バーのスタッフと会話をしつつも、周りの会話も結構聞こえてきます。まあこのあたりは職業病的なところもありますが…。

 左隣のカップル?はどうやらカップルではなく、お互いにこのお店にはたまに来るけれども会うのは初めてのようでした。私も初めてお目にかかります。でも二人で話しているようだったので特に話しかけたりすることはしません。

 キャッシュオンデリバリーのお店なので1オーダー毎に代金を支払うのですが、どうやら途中から左隣の男女の男性のほうが女性に奢り始め、結構な杯数になっているようです。

 それ自体は正直珍しくもなんともない光景です。男性は奢りたくて奢ってるのですし、女性側も恐縮している様子はあれど特に嫌がっている様子はありませんでしたが・・・

 その男性の発する言葉がまずかったです。何杯も奢られて恐縮している女性に向けて、「払える人間が払えば良いのだ、自分は稼いでいるから大丈夫だ」と。そしてそれはどうもこの女性を口説き落としたいニュアンスが含まれているようでした。

 シチュエーションによっては至極真っ当なことなので批判を招くような言葉や考え方ではありませんし私も意見としては同調しますが、ただ、バーという場で女性に奢りながら言うことではありませんね。同じ考え方であろうと、それを口にするのとしないのでは全く話が違います。

 つまりこれは【嫌われるお客様】の「金持ちアピール」にあたります。

 

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 例えば芸能人でいうと叶姉妹東貴博のように金持ちキャラが定着している人や、「結婚相手に求めるものの最下位:経済力」とした宇多田ヒカルのように普通に考えたら誰がどう見てもそりゃ金持ってるに決まってるだろと思える人でない限り、金持ちアピールは他人を不快にさせますし、不要な嫉妬を買うという点でアピールした本人にもメリットはありません。そう、金持ちアピールで羨望や尊敬、他からの承認を得ることはできず、得られるのは嫉妬、それからくる過小評価、侮蔑といったネガティブなものばかりです。

 バーにおいても金持ちと認識されることで開かれる関係性やコミュニティも確かにありますが、わざわざ直接的な言葉でアピールした結果そうなることはほぼないと言ってよいでしょう。

 

 さらに悪いことには、その男性がまだ若者だったということです。あとで知ったところによると、24歳で会社を経営しているそうです。もちろんそれ自体はとても立派なことです。しかし年齢は関係ない、払える奴が払えればよいとのことですが、やはり年齢はある程度関係あるのです・・・奢る時や、それをいちいち口に出す場合は。

 同じ会社経営者でも、あるいはサラリーマンの平社員だったとしても、そこそこ歳のいったオジサンが同じように「払える奴が払えばいいんだよ」というのとはやはり周りの受け取り方が違ってきます。

 つまりここでその男性は、上記の記事の中の「会社での立場をそのままバーに持ち込んでしまう」をやっていることがわかります。会社経営者だろうとなんだろうと、バーにくればただの若者として見られる。むしろバーはそれがよいとおじさん以上の経営者の方は社長扱いされない場を求めていらっしゃったりするわけです。しかしその若い男性はなかなか鼻につく方法で社長アピールをしてしまった。もろに若さと言いますか、経験不足が露呈したなあという気がしました。

 

 そして残念ながらもっと悪いことが。

 私の左隣がこの男女だったのですが、反対側、右隣の常連さんグループがどういう方々だったかというと・・・自分の医院を経営されてるお医者様、なんですよね(汗)。それに、バーのマスターも繁盛店の経営者ですから、その男性より儲かっていることも考えられます。たまたまお店の中が騒がしく、またそれぞれのグループで別々に盛り上がっていたのでどうということはありませんでしたが、もし静かな場であったりカウンターに横のつながりが生まれた場であったら、この若い男性の言動は失笑モノだったということです。

 結局、彼の口説きはあえなく失敗、バーのスタッフから帰るように促された女性は終電で帰って行きました。せめて、幸い会社がうまくいってるからとか、部下やお客様に恵まれて、とか例え嘘でも言っておけば彼の評価もあがっただろうに・・・奢る時に大事なのは、「奢る」と書くからこそ「謙虚さ」なのではないでしょうか。

 

 奢るなら黙って奢れ

 何が言いたいかというと、結局こういうことですね。奢るならアピールしたり恩を着せることなく、ただ奢れ。よく会計は女性がトイレに立ってる間に済ませろなどと言いますが、私はそれに賛成の立場です。そしてこれはキャッシュオンデリバリーのお店では難しいですが、自分が先に帰る際に今まで話をしていた相手(男女問わず)に内緒で「この人の分も自分の勘定につけといて」ということがあります。耳打ちされたり、ジェスチャーだったり、やはりトイレに行った隙だったりと、いろいろありますが、バーテンダーをしているとそういう場面には何度も目にします。そして奢られた方がお会計を頼む時にそれがわかって「えー?うそーー!?」となるわけです。これはカッコいいですね。バーのスタッフや周りのお客様は感心しきりです。連絡先の交換もしていなければ今度いつ会うかもわからない。つまり下心がない。奢る場合にはそれくらいのつもりで奢るべきだと思います。 もちろん、奢られた側は次に会うことがあれば真っ先に先日はありがとうございましたとお礼を言うのが最低限のマナーです。

 

 奢られる側にもマナーと経験値が必要

  と、若い男性の批判ばかりしたような感じですが、女性にも思うところはありました。それは、あまりにも知らない男性に無防備に奢られ過ぎだなということです。誕生日等の特別な冠がある時や、上司部下先輩後輩の関係以外で男性が女性に奢るのは基本的に2つの理由しかありません。

 「奢るのでやらせてください」

 「私との会話につきあっていただいてありがとうございます(楽しく会話ができました)」

 前者が若い経営者の男性、後者が「この人の分も自分の勘定につけといて」と先に帰った男性です。

 奢られる場合はその徐々にどちらかを見定めていく必要があるでしょう。女性側がその先に何を求めるかは人それぞれ、相手次第でしょうが、自分の求める、あるいは悪くないと思っている展開に合致しているかどうかを考えながら飲み進めていく必要があるのではないかなと思いました。ちなみに「自分の求める、あるいは悪くないと思っている展開」が何を意味するかというと、そのままホテルに行くところから下心を利用して奢らせまくるといったところまで様々ですが、今回の女性はその辺の「自分の意思」があまり感じられず若い男性に流されるままだったように見えたので「ちょっと大丈夫かな?」と思った次第です。

 

今回のまとめ

というわけで今回のまとめ!

 

 ・金持ちアピールは周囲のネガティブ感情を引き起こし、それが自分に向けられるので誰にとっても良いことなし

 ・年齢問わず、会社での立場をバーに持ち込むべからず。

 ・自慢をする時は自分の上をいく人間がその場にいるとただただイタイですよ。

 ・奢るなら謙虚に。何も言わずに黙って奢るのがよい。

 ・奢られる側も、相手が何を考えているのかに気をつけること。タダより高いものはない。

 

 今回は男女ともに経験不足なんだな〜と思える案件でした。
 そしてそんなことを思ってしまう自分も歳とったな〜と、地味に凹む夜なのでありました・・・とさ。

 次回こそジン!かな?

 

クラフトウイスキーについて

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さてクラフトビールに続いて今回はクラフトウイスキー

 前回にお話しした通り、クラフト(Craft)とは手工業つまり小規模生産のことですので、そのウイスキー版ということです。大規模な工場でコンピューター管理の大量生産ではなく、昔ながらの方法や、あるいは独自のこだわりの原料や製法で作られたウイスキーのことです。


 ところでウイスキーの作り方を振り返っていただきたいのですが、

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 ウイスキーの作り方は、ホップを加える工程こそないものの、途中までビールと同様です。したがって、個性的なビールを造るノウハウのある醸造所は、事業拡大の次の一手として個性的なウイスキーも造ってみようとなります。
 そこでクラフトビールブームにより誕生し、また資金を得た醸造所が蒸留設備を導入し、クラフトウイスキーを造るようになりました。この動きはもとより多くのクラフト醸造所が存在していたアメリカで盛んになりました。

 またそれ以外にも異業種からの参入も多く、アメリカンウイスキーといえばバーボン、バーボンといえばケンタッキー州だったのですが、現在ではケンタッキー以外の州での小規模蒸留所がいくつも建設され稼働しています。代表的なのはシカゴのKOVAL (コーヴァル)蒸留所。オーガニック素材のみを使用したこだわりの製品を造っています。

 そしてクラフトビールブームの火付け役となったブリュードッグもスコットランドの会社ですから、スコッチの製造に着手しています。2016年に稼働を始めたローンウルフ蒸留所がそれにあたります。

 また日本でも2008年秩父蒸留所・イチローモルトの成功を皮切りに、サントリー、ニッカ、キリン以外の信州マルス蒸留所や江井ヶ嶋酒造など非大手の蒸留所が注目を浴びるとともに、ここ数年で北海道の厚岸や静岡、福島などに蒸留所が建設されています。日本の場合はクラフトビールからの事業拡大というよりはもともと日本酒や焼酎を作っていた会社が手がける場合が多いようです(厚岸と静岡は違いますが)。

 そんな動きに乗じてまたしても某大手メーカーが「クラフトバーボン」なるシリーズとキーワードで既存の大規模生産ウイスキーを売り出していますが、あれはもともとジムビーム社のスモールバッチシリーズとして売り出されていたもので・・・ごにょごにょ 全く良くも悪くも宣伝がお家芸の会社だと思います。

 しかし、上にあげた中ではKOVALのウイスキーは製品化され日本に輸入もされていますが、他のウイスキーはまだ製品化されていません。それは何故か。

 

 ウイスキー作りの最重要課題となるのが「熟成」です。スコッチなら3年以上、アメリカンウイスキーなら(法的な縛りは緩いですが実際のところ)4年以上の熟成期間を必要としています。この熟成年数というものがウイスキーの良し悪しをわける(同じ銘柄でも熟成年数によって値段が段違いに変わったりしますよね?)といっても過言でないくらい重要なのですが、それはつまりその年数分売ることができないということです。

 蒸留・熟成の設備に莫大な初期投資を必要とするにも関わらず数年経たないと売り上げがでない。製品化するときの細かい品質やそのときの市況も不透明(鳥井信治郎竹鶴政孝がやっとの思いで造り上げた国産ウイスキー第一号「白札」がさっぱり売れなかったのは有名)。これは現代のウイスキー造りにおいても不可避の困難であるとともに、キャッシュフローの観点からするといまだ大変なリスクであると言えます。

 最初に莫大なお金を投資、蒸留所の維持費(原材料代、莫大な光熱費、人件費、借り入れ返済)でお金がどんどん出て行く、なのに蒸留したもので得られる利益は全然ない!!

さ〜これは大変です。

 では売り上げがでない期間をどう凌ぐか。現サントリー壽屋には赤玉ポートワインで得た潤沢な資金がありました(それでもだいぶ危なかったようです)。現ニッカの大日本果汁はその名の由来となったように、余市に生るリンゴのジュースをひとまず売って当面の糧としました。まあそれも本格派を目指した濃厚ジュースだったようですが・・・。

 現代では、すぐに製品化できる蒸留酒を造るようです。それがジンです。

 

という理由でひっぱりましたが、次回、ジンについてです!

クラフトビールについて

今回は昨今流行りの「ジン」行きたいと思います!

・・・と思ったんですが、ジンとは何かを語る前に、なぜ最近ジンが流行っているのかを説明するために、先にクラフトビール、クラフトウイスキーについてお話しする必要がありそうなので、まずクラフトビールからまいります。

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クラフトビールとは

 2010年代から目にするようになってきたクラフト〇〇。先駆けはクラフトビールと言って良いでしょう。クラフト(Craft)を直訳すると技術、技巧、などと共に「手工業」と出てきます。つまりクラフトビールとは大規模な工場ではなく、ごく小規模の手工業的な生産方法で作られたビールのことを指します。ちなみにアメリカ合衆国における小規模なビール醸造所(マイクロブルワリー)の業界団体であるブルワーズ・アソシエーション は、クラフト醸造所(craft brewery) を 「小規模、独立、伝統的 (small, independent and traditional)」と定義しています。

  日本での流行は、1994年酒税法改正でビールの最低製造数量基準が2,000キロリットルから60キロリットルに引き下げられて参入障壁が低くなり、多くの地ビールが生産されるようになったことに端を発します。

 しかし街起こしの一端として付け焼き刃的に発売された地ビールの殆どはその品質が低く、 ブームが去るとまもなくその姿を消して行きました。そんな中でも生き残ったものが、現在まで続くジャパニーズクラフトビールの礎となっています。

 生き残ったのは何故か。当たり前のことかもしれませんが、小規模ながら品質や個性にこだわった商品づくりをしてきたからです。アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの4大ビールメーカーの商品とは一線を画し、なおかつ消費者の支持も得られるものを追求してきた結果と言えます。

 そうして常陸野ネストビールやコエドビールといった代表的なクラフトビールが、酒屋さんや高級スーパーの外国産ビールの隣に並ぶようになりましたが、一部の愛好家やプロには知られていても、まだブームというほどではありません。

 そんな中、2007年にとんでもないクラフトビールメーカーがスコットランドに誕生します。その名もブリュードッグ醸造所(Brewdog Brewery)。看板商品となった「パンクIPA」という名に表されるように、アルコール度数55度のビールを作ったり(限定11本)、戦車を使って街頭宣伝をしたり、バイアグラ入りビールを作ったりと、やることなすことがぶっ飛んでいます。それもそのはず、ブリュードッグを設立した2人の若者、ジェームズ・ワットとマーティン・ディッキーは当時のイギリスの停滞したつまらないビール文化を破壊しようと思っていたからです。過激な手法に反対派も多かったようですが、まさに破竹の勢いでイギリスのみならず瞬く間に世界を席巻し、ビール界の勢力図を変えるまでになりました。

 その過程で各地の新興ビール醸造所や以前から存在していた大手以外の醸造所も注目を集めることとなり、世界的にクラフトビールブームが起こったというわけです。特にブーム以前からアメリカには多くの小規模の醸造所が存在していたため、それらも一気に陽の目をみることになり、日本にも多くの製品が輸入されるようになりました。

 もちろん、ブームを受けて世界各地、特に日本やアメリカでクラフトビールを生産する企業が増えていき、特に上記のパンクIPAのようなインディアン・ペールエールと呼ばれる製法のビールが人気を博しました。IPAは元々は暑いインドへの輸出用だったため、長い航海に耐えられるようにホップを多く加えた強い風味を持つものでしたが、現代ではその特徴を引き継ぎホップを多量に使用し、個性の強いものとなっています。一方、中には大手ビールメーカーの手がける「クラフトビール」もあり、確かに少量生産ではありますがこれはクラフトビール とは呼べないのではないかと思っていたりもします。

 また、日本でもドイツのビールのお祭り「オクトーバーフェスト」が各地で盛んに開催されるようになり、こうした場でもクラフトビール が広まっていきました。 

 

こうして各地に小規模なビールの醸造所ができましたが、これがそれからほどなくして起こるクラフトウイスキーブームの発端となっていきます。

 

というわけで次回はクラフトウイスキーについて。

 

ブランデーについて

 

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ウイスキー、ワインときたので、今回はその中間??のブランデーについて語ってみましょう。※上の画像だけだとウイスキーと区別がつかないっていうね。まあグラスはブランデーグラスですが・・・

 

さてブランデー、どういうイメージでしょうか。

やっぱり暖炉の前のロッキンチェアーでバスローブでペルシャ猫を膝に乗せつつグラスを回しているダンディなおじさまでしょうか。岡田眞澄的な(もしかして最近の若者は岡田眞澄さん知りませんかね・・・??)。

 

そう、ブランデーというお酒は昭和で止まっています。
正確にはバブルが弾ける1991年(平成3年)あたりでしょうか。

ちなみにその頃からバーボンブームが起こり、ワインブーム、焼酎ブーム、シングルモルトブーム、ハイボールブーム、日本酒(地酒)ブーム、クラフトビール(地ビール)ブーム、クラフトジンブームと続き、それぞれがブーム以前よりも広く深く世の中に定着したように思います。一方で取り残されたブランデーはまるでバブルの遺物のように思っている方は少なくないでしょう。

 注目を浴びるとすればクラブ、キャバクラ、ホストクラブのような場所で高単価商品として有名銘柄が登場した時くらいでしょうか。

 もはや平成も終わろうとしている今日ですが、まさに平成はブランデーにとってはほとんど表舞台に出ることのない暗黒時代であったかもしれません。

 

ブランデーとは

 さてそんなブランデーとは一体何者なのか。冒頭でウイスキーとワインの中間と申し上げましたが、正体は「ブドウなどの果実を原料とした蒸留酒」なので、普段一般的に「ブランデー」と呼んでいるものは正確には「グレープブランデー」なのです。ブドウではなくリンゴを原料としていれば「アップルブランデー」となります。フランス北西部のブドウの生育条件の北限を超えた地域であるカルヴァドス地方のものが有名ですね。

 ブランデーという名前は、フランス語で「焼いたワイン」を指すヴァン・ブリュレ(Vin brule)と呼ばれていたものが、17〜18世紀にかけてオランダ人がブランデウェイン(Brandewijn)と直訳してイギリスに広め、それが縮められてブランデー(Brandy)となったとされています。蒸留することを「焼く」と表現するのは丁度、日本の「焼酎」と同じ発想であると言えそうですが、蒸留という共通した技術は用いているものの、全く異なる言語の国の異なる酒が同じ発想で呼ばれるのは不思議な感じがします(日本は当時鎖国中です)。

ブランデーの産地、品種

 産地としてはフランスのコニャック地方とアルマニャック地方がとても有名です。ともにワインで有名なボルドーのそれぞれ西と南に位置しており、コニャックはグラン・シャンパーニュ、プティ・シャンパーニュなどに分かれ、アルマニャックはバ・ザルマニャック、テナレーズ、オー・タルマニャックに分かれます。

 使用するブドウ品種はユニ・ブランと呼ばれるものが多く、ワインにすると酸味が強すぎ、糖度が低いためアルコールも弱いものができるのですが、ブランデーの原料としては酸味が強い方が良い香気成分を多く吸収できたり、アルコールが弱い分多くのワインを必要とするためかえって凝縮感のある仕上がりになったりと、ワインでの弱点がそのまま長所になるようです。

ブランデーの熟成とブレンド

ウイスキー同様、ブランデーも樽で熟成されて琥珀色を帯びます。
ここで注意したいのが熟成年数とその表記です。

ブランデーのラベルにX.O.とかV.S.O.P.と書いているのを見たことはあるでしょうか。これは熟成年数の目安の表記となります。

コニャックの場合は

V.S.・・・約3年以上
V.S.O.P. 、Reverve ・・・約5年以上
EXTRA、 NAPOLEON・・・約7年以上
X.O. ・・・約11年以上

 

そして厄介なのが、アルマニャックだと同じ表記でも年数が違います。

V.S.・・・約3年以上
V.O.・・・約5年以上
V.S.O.P.・・・約5年以上(平均熟成年数5~10年)
NAPOLEON・・・約6年以上
X.O.・・・約6年以上(平均熟成年数20~30年)



異なる熟成年数のものをブレンドしますが、一番若い樽の年数が表記に反映されます。

またコニャックでもアルマニャックでもない、ノーブランドのものはフレンチ・ブランデーと呼ばれますが、それらにも上記のような表記が用いられることはあるようです。
しかし厳格に規則があるわけではないので、上記のような年数が保証されているかは怪しいところです。

 

 ところで、どうもバブル期にブランデー全盛期を謳歌したおじさま達の中にはV.S.O.P.や NAPOLEONをブランデーの銘柄の名前だと思い込んでいる方々がいるようですが、それは誤りです。たまに「ナポレオンある?」「ブイエスオーピーある?」と言われます。それとわかりながらも一応「銘柄はご希望ありますか?」と聞くと「???」となり、あちゃーと思うわけです。確かに「サントリーV.S.O.P.」という銘柄は存在しますが・・・。

 

ブランデーのこれから

 そんな「おじさんのお酒」のイメージが強いブランデーですがもうそろそろブランデーが陽の目をみる日も近いのではないのかと思っています。なんとなくですが。

 まずそれぞれのお酒のブームが落ち着いてきたので、次は何かといった時に、そろそろ選択肢がなくなってきたのではないかというのがひとつ。お酒の種類でメジャーなものといえば後はテキーラとラムとブランデーくらいしか残っていません。テキーラはいまだにウェイ系、パリピさん達の間では定番で良くも悪くも流行とは少し離れた位置で定着していますし、ラムについては既に大流行していても良さそうなものですが、パイレーツオブカリビアンやワンピースといった海賊モノが2000年代にこれだけ人気を博したにも関わらずラム単体はなかなか流行りません。代わりにラムベースのカクテル「モヒート」が流行りました。

 

 ブランデーについてはウイスキーハイボールが定番化したので、差別化を図ろうとするお店などがブランデーを使用した「フレンチハイボール」を試みたりしています。甘めのものが好きな人はこちらのほうが良いのではないでしょうか。またケーキなどのデザートとも親和性があります。

 コニャック・アルマニャックに代表されるフランスのブランデー以外のブランデーも注目です。私が知っているお店ではギリシャの「メタクサ」というブランデーが上品な甘さで大変人気があります。白い陶器に花柄のようのな装飾が描かれたボトルも目を引き、特に女性からの支持が高いようです。

 現在の「当たり前」を打破する手段のひとつとして、昭和に置き去りにされてしまったブランデーを起用しようという動きが、少しずつですが高まってきている気がします。

 

シャンパーニュ(スパークリングワイン)について

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だいぶ更新をお休みしてしまいました。
どれもこれも全て花粉のせいということにいたします。

 

 さて今回はオサレなお酒の筆頭、シャンパーニュシャンパン)でございます。
恐らくシャンパンと呼ぶ方のほうが圧倒的に多く、シャンパーニュと呼ぶとなんだか通ぶっているような気恥ずかしさがありますが、通というかプロなもんで、シャンパーニュでいこうと思います。

 

シャンパーニュとは

 シャンパーニュとは発泡性ワインであるスパークリングワインのひとつで、フランス北西部のシャンパーニュ地方にて、瓶内二次発酵をするトラディショナル方式(シャンパーニュ方式とも)を用いて造られるものをいいます(他にも使用するブドウなど細かな規定はあります)。

 

 シャンパーニュと言うと、パーティーなど華やかな場所で乾杯に用いられるお酒というイメージがあると思いますが、これにはれっきとした由来があります。シャンパーニュ地方の中心都市であるランス(Reims)にはランス・ノートルダム大聖堂 (Cathédrale Notre-Dame de Reims)があり、496年のクローヴィスのキリスト教への改宗以来、この地で歴代フランス国王の戴冠式が行われてきました。そこでこの地で造られるワインがその場で供されることとなり、祝宴の場のお酒というイメージが定着していきました。

 

 ところでフランス北西部にあるシャンパーニュ地方はフランス国内でも最北端のワイン生産地であり、ブドウの生育にとっても限界点と言えます。したがって生育条件は厳しく、毎年ブドウの生産量や品質はバラつきが生じやすくなります。したがって一般的なシャンパーニュでは異なる年のブドウで作られたワインを混ぜて製造されます。一方で、そんな中でも気象条件に恵まれたブドウの当たり年には他の年のものと混ぜられることなく、その年のブドウのみで作られたシャンパーニュが生産されます。皆さんご存知「ドン・ペリニョン」などがそれにあたります。

 

 さてそろそろ製造方法を見て行きましょう。

 

シャンパーニュの製造過程

①収穫(ヴァンダンジュ、Vendange)
 通常9月〜10月初旬に収穫が始まりますが、シャンパーニュ地方全域で手摘みが義務付けられています。

②圧搾(プレシュラージュ、Pressurage)
 黒ブドウの皮の色がつかないように静かに搾られます。

③一次発酵(プルミエール・フェルマンタシオン、Premiere Fermentation)
 ブドウを品種・産地・収穫年ごとにわけて、樽やステンレスタンクで通常の白ワインのように発酵させます。

④調合(アッサンブラージュ、Assemblage)
 異なる品種、産地、収穫年のワインを目的とする味わいになるように調合する。

⑤瓶詰め(ティラージュ、Tirage)
 リキュール・ド・ティラージュと呼ばれるワインと酵母と蔗糖の混合液を加える。
これにより瓶内での発酵が進みます。

⑥瓶内二次発酵(ドゥジエム・フェルマンタシオン・アン・ブティユ、Deuxieme Fermentation en Bouteille)
 瓶の中で発酵が進み、発泡ワインとなります。

⑦熟成(マチュラシオン・シュール・リー、Maturation sur lie)
 発酵を終えた酵母が滓となって沈殿し、その状態で熟成させます。期間は収穫年表記のあるもので3年以上、ないもので15ヶ月以上と決まっています。

⑧倒立(ミズ・シュール・ポワント、Mise sur pointe)
 ピュピトルという滓下げ台に瓶を逆さまにして差して並べ、滓を瓶口に集める

⑨動瓶(ルミュアージュ、Remuage)
 5〜6週間に渡って倒立させている瓶を少しずつ回転させ、瓶の側面の滓も瓶口に集める

⑩滓抜き(デゴルジュマン、Degorgement)
 瓶口を-20℃の塩化カルシウム水溶液に浸し滓を凍らせ、栓を外して滓を飛び出させる。

⑪添加(ドサージュ、Dosage)
 門出のリキュールと呼ばれるワインと糖分の溶液を加えて、滓抜きで減った分を補い、味を調整する。その際の糖分の量により甘さや辛さが決まります。

⑫打栓、ラベル貼り

 

以上がシャンパーニュ製造工程です。⑤、⑥がシャンパーニュ方式と呼ばれる瓶内二次発酵の部分ですね。また滓抜きも瓶ごとに行う必要があります。この工程を経なければシャンパーニュと呼ぶことができません。

 

では他にどういう発酵方法があるかというと、

 

シャルマ方式:④まで作ったワインを大きなステンレスタンクに移し替え、そこで二次発酵を行う方法です。「瓶内」二次発酵ではないということです。イタリアのアスティ・スプマンテなどが代表的です。

 

トランスファー方式:⑦まで終えたは発泡ワインを加圧したタンクに移し替え、冷却・濾過してから新しいボトルに詰め替える方式。動瓶と滓抜きを大量に一度に行う方法。

 

このようにシャンパーニュは一本一本丁寧に作られていることもあり、泡立ちが非常に豊かです。
できれば綺麗な照明のある場で、大切に飲みたいものですね。

ワインについて3 白ワイン・ロゼワイン製造方法

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さて今回は白ワインとロゼワインの製造方法についてです。

 

白ワイン

白ワインは主に白ブドウから造られますが、赤ブドウからも造ることができます。

①収穫(ヴァンダンジュ、Vandange)

 まずはブドウを収穫するところから。赤ワイン同様、ただ実がなったら収穫という話ではなく、目的によってそのタイミングは様々です。特に白ブドウにおいては色々な収穫方法があります。

 

②破砕(フーラージュ、Foulage)、除梗(エグラパージュ、Egrappage)

 ブドウを潰し、果梗(「ヘタ」の部分)を取り除きます。

③圧搾(プレシュラージュ、Pressurage)

 赤ワインでは発酵と醸しの後に圧搾を行っていましたが、白ワインではすぐに圧搾をします。

 

④主発酵(フェルマンタシオン・アルコリック、Fermantation Alcoolique)

 ブドウを潰して得られた果汁、果肉、種子の混合物 (果醪)を木桶やステンレスタンクに入れて酵母を加えます。その酵母の働きにより糖分がアルコールと二酸化炭素に変換されます。赤ワインに比べ発酵温度を低く設定します。

 

マロラクティック発酵(Malo-Lactic Fermentation)

 主発酵の後に、ワイン中に含まれるリンゴ酸(Malic acid)が乳酸菌の働きによって、乳酸(Lactic-acid)に変化する現象です。これにより、ワインがまろやかになったり、複雑味が増したり、成分が安定したりといった効果があります。銘柄によって行うものとそうでないものがあります。

 

⑦熟成(エルヴァージュ、Elevage)

 熟成を終えたワインを樽またはステンレスタンクに移し替えて一般には数年熟成させます。 樽の中の滓を棒で攪拌し、その旨味成分を抽出する作業(バトナージュ、Batonnage)が行われる場合があります。

 

⑧滓引き(スーティラージュ、Soutirage)

 熟成中には滓が沈殿するので、上澄みを別の容器に移し替えて滓を取り除きます。

 

⑨清澄(コラージュ、Collage)

 ワインの透明度をさらに上げるために、場合によっては清澄剤を使用します。

 

⑩濾過(フィルトラージュ、Filtrage)

 瓶詰めの前に各種のフィルターや遠心分離機を用いてワインを濾過します。

 

 ここまでが白ワインの製造方法です。赤ワインとの大きな違いは果皮・種子を分離し果汁のみを発酵させることと、醸しを行わないことです。

 

 そこで、その違いの部分をいくつかの方法で折衷すると、ロゼワインができあがります。

 

ロゼワイン

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セニエ法

 赤ワイン同様に黒ブドウを使用し、途中まで同じ製造工程を経る。醸しの段階で、ほどよく色づいたところで液体部分を果実や種子から分離し、白ワインのように低温発酵させる。つまり赤ワインに比べて醸しの時間を短くする手法ということ。

 

②直接圧搾法

 黒ブドウのみを原料として白ワインと同じ製造工程を辿り、破砕、圧搾する際の果皮から果汁に移る赤みのみを利用してロゼワインとする。

 

③混醸法

 黒ブドウと白ブドウを混ぜて発酵させ、①のセニエ法と同様の工程をとる。

 

ブレンド

 すでに完成している白ワインと赤ワインを混ぜる。ヨーロッパではスパークリングを除き禁止されている。

 

以上、白ワインとロゼワインの造り方でした!
次回はスパークリングワインに行きたいと思います!