さてお酒についてシリーズ再開します。
今回は海にまつわるお酒の代表格、ラムでございます。
ジン同様、ラムの歴史を紐解くところから始めましょう。
ラムの歴史
時は16世紀の大航海時代(地理上の「発見」時代)に遡ります。
1492年にかの有名なコロンブスが新大陸を発見し帰欧した後、アメリカに向けて2度目の航海に出ているのですが、その時にスペインのカナリア諸島(サッカーの柴崎岳選手が在籍していたテネリフェや移籍の噂があったラス・パルマスなどがあるアフリカに近い島々です)産のサトウキビをカリブの島に移植しました。今でこそラムといえば中南米、カリブの島々のイメージが非常に強いですが、実はサトウキビはその地域の原産のものではなかったのです。ちなみに原産はニューギニアあるいはインドとされているようです。
そうして持ち込まれたサトウキビによってまず作られたのはラムではなく、砂糖でした。当時「甘み」というのは非常に貴重であり、しかしそれが大量生産できる気候と土地があるということで、砂糖の生産は新大陸に進出したヨーロッパの国々の一大事業となりました。
そこで必要となる多大な労働力として使われたのが先住民のインディオやアフリカから奴隷として連れて来られた黒人たちです。そして黒人を強制連行するために必要な武器がヨーロッパから西アフリカへと渡ります。
ここに、ヨーロッパから武器や綿織物などをアフリカへ、アフリカから奴隷を中南米カリブへ、カリブからヨーロッパへ砂糖を取引する三角貿易が成立しました。
さて、狙い通りに砂糖は大量生産されてヨーロッパに輸出されるようになった訳ですが、サトウキビから砂糖を作るときには結晶化して砂糖になる部分と、結晶化しない部分があります。結晶化しない部分は糖蜜と呼ばれ、砂糖の生産量に比例して糖蜜が出来る量も増えていきます。そこで、この糖蜜を発酵、蒸留させることでラムが誕生しました。
当初は奴隷達を手なづけるためや船乗りの壊血病対策のお酒として用いられた、あまり品質の良くないものでしたが、1693年に、フランスからカリブのマルティニークに渡ったフランス人修道僧ペール・ラバがコニャックの蒸留機や技士を持ち込み、ラムを本国の酒造り同様に行うようにした結果、その品質は飛躍的に向上したと言われています。
現代のラム
現代のラムは中南米に限らず東南アジアや日本の小笠原諸島や南西諸島、ついには本州でも生産されるようになっています。またラム専門バーが各地にありマニアを虜にしている他、近年ではモヒートの人気もあり一般的にも広く好まれるようになってきています。
※参考:日本ラム協会「ラムの歴史」
ラムの製法
前述のようにラムはサトウキビから出る糖蜜を発酵、蒸留することで作ります。
蒸留後、まったく熟成されないものをホワイトラム、数ヶ月〜3年未満の間熟成させて黄金色になったものをゴールドラム、それ以上の長期の熟成期間を経て茶褐色になったものをダークラムと言います。
また製法においても、トラディショナル、アグリコール、ハイテストモラセスの3種類があります。
トラディショナルはその名の通りラムが作られ始めた頃からの伝統的な作り方、すなわち砂糖を作るときに出る糖蜜を使用するもの。
アグリコールは砂糖を作る工程を経ず、サトウキビを100%ジュースにして蒸留する製法。
ハイテストモラセスはサトウキビジュース100%を加熱し、シロップ化したものを原料とする最も新しい製法。加熱し固形化した黒糖を原料とするものも含まれます。
参考:日本ラム協会「ラムの種類」
モヒートについて
近年人気のモヒートですが、改めてどういったものか触れてみましょう。
【モヒートとは、ラムをベースとして、ミント、ライム、ガムシロップを加えて潰したものにクラッシュアイスを入れ、最後にソーダで満たしたものである】
というのが標準的なレシピでしょうか。標準的というのは、モヒートもお店やバーテンダーによって作り方が様々ですので、例えばラムがダークラムであったり、ライムの果汁のみを使用して果肉が入っていたりいなかったり、レモン果汁も併用していたり、ソーダは加えなかったりということがあります。
知っておくとポイントが高いと思われるのは、ミントを使用すると書きましたが、本場であるキューバで使用されるのは日本でよく売られているスペアミントではなく「イエルバ ブエナ」という種のミントであるということです。イエルバ ブエナにも様々な種類がありますが、キューバンモヒートで使用されるのはどうやらスペアミントとパイナップルミントの交配品種が多いようです。日本で売られている一般的なスペアミントと比べると葉が大きく、野性的な見た目と香りがします。最近はネット通販や地域によっては店頭でも手に入るようになったので、モヒートにこだわりのあるお店ならイエルバ ブエナを使用していると思います。
どういうモヒートの作り方をしているかによってもどういったバーなのかがわかると思います。上記のようにラム、生のライム(の果汁)、生のミント(やイエルバ ブエナ)を使用して丁寧に作って入ればそこそこのレベルのお店だと思われます。逆に炭酸を注ぐだけでできあがるようなモヒートの素みたいのを使っているところは、あまり味は期待できないでしょう。前者はオーセンティックバーやホテルバー、ラム専門バー、高級志向のショットバーに多く、後者はカジュアルなショットバーやダイニングバー、スペインバルなどに多いように思います。一口にモヒートといってもイメージ通りのものが出てくるとは限らないということを覚えておきましょう。
私にとってのラムの印象
私の考えではとにかく一番カオス!なのがラムです。何がカオスかと言いますと、「法律による規制」「大企業による生産管理」が一番なされていないのがラムという印象です。サトウキビを原料とした蒸留酒であればラムと見なされるという、あってないような縛りなので世に知られていない銘柄が数多ありますし、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラの4大スピリッツの中ではもっとも「地酒」感が強いと思います。
バカルディやハバナクラブ、マイヤーズなどに代表される有名銘柄も多くありますが、やはり大企業傘下にないラムの生産量はまちまちで、日本に入ってくるタイミングも不定期だったりします。
要は、良く言えば自由、悪く言えばテキトー。。。
でも、このテキトーさを楽しむのがラムを飲むのには一番の環境のような気がします。歴史やら製法やら書きましたが、飲むときにはそれは一旦置いといて、夏の晴れた日に水着のおねーちゃんやら6パックのおにーさんやらを肴にクラッシュアイスやらモヒートやらでかる〜く楽しむ。傍に葉巻なんてあるとさらに良いのですが。夜にはストレートやロックでしっぽり。オーセンティックバーもいいですが、陽気な音楽のかかったカジュアルなお店もいいですね。
お酒は楽しく飲むものとはいうものの、しみじみしたかったり物思いに耽りたかったりということもあるでしょう。お酒を飲むときの「楽しさ」というのは必ずしもテンション高めではありません。しかしラムは陽気な気分のときや、陽気になりたいときにぴったりのお酒かなと思います。
ラムについてはこれにておしまい。
さて次回はパリピの必需品、テキーラでございます!!