バーとお酒の入門講座

バー初心者の方を対象に、バーならではのマナーや楽しみ方、お酒に関する基本や雑学、豆知識を書いていきたいと思います。バーに興味はあるけれど、何だか最初の一歩が踏み出せない、そういう方の一助になれば幸いです。

アイランズ① ハイランドパーク蒸留所

f:id:vagrantbartender:20190125114008j:plain

 Highland Park ハイランドパーク

エリア: オークニー諸島・メインランド
創設年: 1798年
所有者: エドリントン・グループ社
仕込み水: クランティットの井戸水

 アイランズ一ヶ所目はハイランドパーク。私の最も好きな銘柄のひとつです。ウイスキー評論家の故マイケル・ジャクソン氏も『全モルトウイスキーの中で、もっともオールラウンダーで秀逸な食後酒』と評価し、「北の巨人」という異名がついています。

 ハイランドパークといえばヴァイキングを祖先に持つ伝説的な密造者と言われるマグナス・ユウンソンがその始祖として知られています。伝説の密造者というといかにもな悪人を想像しそうですが、このマグナス・ユウンソン、なんと教会の聖職者。庶務をしていたとか長老であったとか諸説ありますが、収税官の目をごまかすために、査察官が来るとわかるやいなや天然痘患者(天然痘は非常に致死率の高い感染症として恐れられていました)の葬儀を偽装し、即座に追い払ったと言われています。

 19世紀後半にはハイランドパークの名声には広く知れ渡るようになり、特に1883年デンマーク王やロシア皇帝を招いたユニオン・カッスル汽船主催の豪華船上パーティーでは、ハイランドパークに対して「最上のモルトウイスキー」という賛辞が送られました。

 ちなみに「ハイランドパーク」という名は蒸留所がメインランドの中心都市カークウォールの高台、ハイパークと呼ばれる場所にあったことが由来とされています。名前だけ見るとハイランド地方のウイスキーかなと思ってしまいますが、ハイランド地方とは直接の関係はありません。仕込み水は背後の丘の上にあるカティーマギーの泉から引いていたが、現在は蒸留所下のクランティットの井戸水を使っています。どちらも硬水で、カティーマギーはマグナス・ユウンソンが密造に使っていた水と言われています。

 ハイランドパークは今でもフロアモルティングを行う数少ない蒸留所のひとつですが、その乾燥に使用するピートはホービスターヒルという独自の採掘場から切り出されたもので、フォギー、ヤフィー、モスという3層に分かれます。オークニーは寒冷で風が強いため樹木が一切育たず、これらはアイラ島やスカイ島と違って全てヘザーなどのシダ植物が堆積して出来たものだと言われていますが、ハイランドパークの独特のアロマティックなフレーバーは、このピートがもたらすと信じられています。

 オークニー諸島の人々は自分たちをスコットランド人というよりはヴァイキングを祖先とするオーカディアンと自認することが多く、ハイランドパークも近年はヴァイキング色を強めたボトルデザインやネーミング、商品のデザインが多くなされています。

 

参考文献