バーとお酒の入門講座

バー初心者の方を対象に、バーならではのマナーや楽しみ方、お酒に関する基本や雑学、豆知識を書いていきたいと思います。バーに興味はあるけれど、何だか最初の一歩が踏み出せない、そういう方の一助になれば幸いです。

ウイスキー用語集:「フロアモルティング」とは?

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 ウイスキー蒸留所の紹介をしていくにあたり、専門用語がわからないと文章自体もよくわからないのでは?と思うところがありましたので、特にスペイサイドのスコッチ蒸留所を紹介していた時にこれは取り上げねばと思った用語などを、不定期で上げていこうと思います。

 

 第一回は「フロアモルティング」。スコッチ界隈では非常によく聞く言葉ですが、この言葉を説明するためには、まずスコッチの製造工程に触れなければなりません。

 スコッチの製造工程としてはまず、収穫した大麦を発芽させ、麦芽と呼ばれる状態にする必要があります。英語にするならば、

  大麦=バーレイ Barley
  麦芽=モルト Malt

 です。なぜ大麦を発芽させて麦芽にするかというと、大麦の種子に含まれるデンプン質はそのままではアルコールに変換させることができないので、糖化させる必要がありますが、大麦を発芽させ麦芽にすることで、糖化に必要な糖化酵素の働きが活発になります。その工程を「製麦」(モルティング、Malting)と言います。

 

 ウイスキーの製造工程から逆算しますと、

・蒸留するアルコールを含んだ液体を得るために、発酵をしなければならない

 ↓

・発酵には糖分が必要(糖分を酵母が食べて=資化、アルコールと二酸化炭素を生成)

 ↓

・もともと糖分のない大麦を発芽させることにより糖化酵素を活性化、温水と混ぜることにより発酵性糖類を生成する

 ↓

・より効率よく糖化させるために、管理された発芽が必要

 ↓

・モルティング

ということです。

 

 さてそのモルティングの工程はというと、まず大麦を2〜3日水に浸けておき、発芽を促します。この時に使われる水が蒸留所毎に個性のある仕込み水です。そしてその後に水分を含んだ大麦を攪拌して水分量を調整、発芽が均一に進行するようにする作業があります。

 伝統的な方法ですと、水分を含んだ大麦を床に広げ、24時間体制で季節により6〜7日シャベルなどで人力で攪拌しつづけます。これがフロアモルティングと呼ばれる手法です。この作業を行う職人をモルトマンといいますが、過酷な重労働であり、また経験と技術も必要な作業のため、現在ではこれを行う蒸留所はほとんどありません。

 現在フロアモルティングを行なっているスコッチの蒸留所は

 ・ラフロイグ
 ・ボウモア
 ・キルホーマン
 ・ハイランドパーク
 ・バルヴェニー
 ・グレンドロナック
 ・スプリングバンク

 以上の7箇所のみとなっています。

 

この伝統的なフロアモルティングに対して現代で主流となっているる製麦方法はモダンモルティングと総称され、巨大な回転する円筒形の機械を使ったドラム式モルティングや、部屋の区切って床から風を送り込むサラディン式、浸麦→発芽→攪拌→乾燥がひとつの建屋の中で自動的に行われるタワー式などがあります。

こうした機械化された大規模な設備を持つ製麦専門業者はモルトスターと言われ、多くの蒸留所はモルトスターにそれぞれの目的に応じたレシピ(使用する大麦の品種やピートの炊き込み具合など)の麦芽の製造を依頼、買い取って使用しています。

 

 こうして大麦を発芽させるわけですが、発芽しすぎても糖分が逆に失われてしまうので、大体芽が麦粒の8分の5程度になったら発芽の進行を止めます。どうやって止めるかというと、麦芽を乾燥させて生長に必要な水分を取り除くという方法をとります。

 この時にピート(泥炭)を燃やしてその煙で乾燥させたものは、出来上がったウイスキーに薫香が付与されます。 詳しくはウイスキー用語「スモーキーフレーバー」「ピート」として後日書こうと思います。

 

参考文献