バーとお酒の入門講座

バー初心者の方を対象に、バーならではのマナーや楽しみ方、お酒に関する基本や雑学、豆知識を書いていきたいと思います。バーに興味はあるけれど、何だか最初の一歩が踏み出せない、そういう方の一助になれば幸いです。

スペイサイド ⑯ ストラスアイラ蒸留所

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Strathisla ストラスアイラ

エリア: スペイサイド キース地区
創設年: 1786年
所有者: ペルノ・リカール社
仕込み水: フォン・ブイエンの泉など

 

 ここまでの数記事ではスペイサイドのキース地区の蒸留所を紹介してきましたが、その中心都市であるキースの街は18世紀初頭にリネン産業で栄えました。しかし18世紀後半にはリネン産業は衰退し、代わりに投資先として選ばれたのがウイスキーの蒸留でした。蒸留所が建てられたのは1786年とスペイサイド最古であり、政府からウイスキーの蒸留所が公認されるのは1824年とまだ先のことなので、ウイスキーは産業と呼べる代物ではなかった時代の話です。

 建設当初はリネン工場の街だったことから「ミルトンMilton」または「ミルタウンMiltown」(双方とも「工場の町」の意)と呼ばれていましたが、シーグラム社が買収した1950年にストラスアイラと改名されました。

 ストラスアイラのストラスはゲール語で「広い谷間」の意味です。ゲール語で谷間といえばスコッチの名前で頻繁に目にする「グレン」を思い浮かべますが、こちらは狭い谷の意味だそうで、ストラスは広い谷間。したがってストラスアイラは「アイラ川が流れる広い谷間」の意となります。

 蒸留所の近くには「フォン・ブイエン」(ゲール語で「泡立つ泉」)と呼ばれる古い泉があり、13世紀には修道士たちがこの水を利用してビールを作っていたそうで、この地域の酒造りの基礎を築いたと言われています。またこのフォン・ブイエンは馬の姿をしたケルトの妖精ケルピーに守られていると言われ、自身に近づく者を川や湖に投げ込むという伝説があります。ストラスアイラの職人はそれが隠し味になっているのだと豪語するそうです・・・。

 さてそんなストラスアイラですが、ブレンデッドウイスキーのシーバス・リーガルの核となるモルトであることがよく知られています。したがってほとんどがシーバス・リーガルに使われますが、シングルモルトも少量ながら生産されています。出回る量は少ないと言われていますが、それでもグレンフィディック、ザ・グレンリベット、マッカランのような超有名銘柄は例外としても、他の蒸留所のものに比べれば比較的お目にかかりやすいシングルモルトと言えます。

 またスペイサイド最古の蒸留所でありながら大規模な建て替えなどが行われておらず当時の姿をほぼ残しているので、建築物としても非常に見所のある蒸留所となっています。