バーとお酒の入門講座

バー初心者の方を対象に、バーならではのマナーや楽しみ方、お酒に関する基本や雑学、豆知識を書いていきたいと思います。バーに興味はあるけれど、何だか最初の一歩が踏み出せない、そういう方の一助になれば幸いです。

スペイサイド① ベンローマック蒸留所

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Benromach ベンローマック

エリア: スペイサイド フォレス地区
創設年: 1898年
所有者: ゴードン&マクファイル社(通称 GM社)
仕込み水: チャペルトンの泉

 

 フォレス地区唯一の蒸留所。かつてはダラスドゥー(Dallas Dhu)という蒸留所も存在していましたが、1983年に閉鎖されています(現在は博物館としてその姿を残しています)。

 そんなベンローマックもまともに稼働したと言えるのは1998年。なんと創設から100年後のことです。というのも、創設された1898年は大手ブレンダーのパティソンズ社が倒産した年ですが、当時はシングルモルトという概念はないに等しく、蒸留所は生産したウイスキーをブレンデッドウイスキーの材料としてブレンダーに買い取ってもらうのが通常でした。したがってパティソンズ社の倒産というのは、下請けの町工場にとっての大口取引先の倒産のようなものです。それも生産開始の直前に。さあどんどん生産して投資分を回収しようとしていた矢先のことですから、最悪のタイミングと言えます。事実パティソンズ社と取引をしていた中小の蒸留所は連鎖倒産のような形でつぎつぎと閉鎖に追い込まれていきました。

 ベンローマックもご多分にもれず、短期間の操業はしたもののすぐに生産中止となりました。1909年に再操業したものの、その後も操業と休止、何度もオーナーが入れ替わるということの繰り返しを続け、ナショナル・ディスティラリーズやDCL(Distillers Company Limited、ディアジオ社の前身)などの大手企業の経営を経た後、1983年に閉鎖されていました。そんな中の1992年、エルギンの独立瓶詰業者であるゴードン&マクファイル社が買収、5年をかけて改装をした後、 1998年に生産が再開されました。

 現在はスペイサイド最小規模ながらも細々と、しかし堅実に生産が続けられています。2008年にリリースされた10年熟成のボトルは複雑な風味のバランスがあまり良いとは言えず評価が芳しくなかったのですが、それ以降の長期熟成のものやサッシカイア(イタリアの有名ワイン)の樽など少し変わり種の熟成方法などを取り入れ、徐々にその評価を上げています。

 

 ちなみにボトラーズブランドが直接所有する蒸留所は多くなく、

ゴードン&マクファイル社・・・「ベンローマック」
アンガス・ダンディ社・・・「グレンカダム」「トミントール」
イアン・マクロード社・・・「グレンゴイン」「タムドゥー」
シグナトリー社・・・「エドラダワー」

 

この4社6蒸留所のみとなっています。中でもゴードン&マクファイル社はボトラーズブランドの草分け的存在となっていますので、ボトラーズとは何かということも含め別記事で紹介できればと思います。