バーとお酒の入門講座

バー初心者の方を対象に、バーならではのマナーや楽しみ方、お酒に関する基本や雑学、豆知識を書いていきたいと思います。バーに興味はあるけれど、何だか最初の一歩が踏み出せない、そういう方の一助になれば幸いです。

お酒とアルコール依存症について

 現在、TOKIO山口達也が女子高生に対する強制わいせつの疑いで書類送検をされた問題が世間を賑わせており、昨日本人による謝罪会見が行われました。

 お酒の問題で1月から1ヶ月ほど入院しており、退院した2月12日の午後から自宅にてお酒を飲み始め、夜になるまで飲み続け、被害者の女子高生に電話をして自宅に呼び出し、事件が起きたとのこと。

twitter.com/vagrantender/status/989406873202839552

 お酒にまつわるこういう事件が起こるのは、バーテンダーとしては非常に残念ですし、はっきり言えば迷惑です。

 

https://twitter.com/vagrantender/status/989406873202839552https://twitter.com/vagrantender/status/989406873202839552

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「お酒のせいでこんな事件が起きた」「お酒は人をダメにする」という論調が広まり、風評被害、営業妨害もいいところだからです。本当に、お酒のせいにはしないでいただきたい。飲酒運転による事故などもそうですね。

 

 そして今回の事件はそこかしこで囁かれているように、完全にアルコール依存症だと思います。 お酒の問題で体調を崩したといって一ヶ月入院をして(あのTOKIOが一ヶ月ですよ??病院から仕事に通っていたのだとは思いますが、それでも大ごとです)、退院したその日に酩酊状態になるまで飲むなんて、ちょっと常識では考えられません。

 

 どうしてそんなことになってしまうのか。

 そこでバーテンダーである私が経験上思うことは、「バーに通うお客様はアルコール依存症にならない」ということです。正直、統計をとったわけではありませんし医学的根拠があるわけではありませんが、延べ何万人と接してきて、アル中になってしまってバーに来られなくなったという方は見たことも噂レベルで聞いたことすらありません。

 確かに、酔っ払って面倒臭いモードのお客様やバーテンダー(苦笑)は時折出現しますし、後に「伝説(笑)」となる赤面ものの大失敗をやらかしたりもしますが、それはあくまでその時は青ざめようとも後々笑い話になる範囲内のものです。時々朝方まで飲んでそのまま出社するような強者のお客様も時々いらっしゃいまして、それはあまり褒められたものではないでしょうが、それでも依存症にはなりません。

 

 何が違うのか。
 思うに、人をアルコール依存症にさせるのは「孤独」です。寂しさやストレスといったものをお酒でまぎらわそうとするところから始まり、それをしなければ気が済まなくなってしまって依存症に繋がっています。

 同じ理由でバーにいらっしゃる方もいますが、バーであれば誰かしら周りに誰かがいて、「世間の目」がありますし、最低限バーテンダーがいます。だから人と話しているうちに、それこそお酒の効果もあって寂しさやストレスなどはどうでもよくなっていくことが多いです。そしてバーテンダーや他のお客様は基本的に仕事などの利害関係や上下関係のない人間です。だから、本当に過度の飲酒、本人の健康を害したりや他人の迷惑になるようなら止めてあげることができるのです。時には叱責を伴うこともあるかもしれません。

 しかし、今回の山口達也がそうであったように、多くの場合は自宅での飲酒が習慣になっています。自宅は、なかなか歯止めがききません。「帰る」必要がありませんし衆人環視のないプライベートな空間です。一人暮らしなら尚更です。話し相手が酒しかいない。そうなるとお酒はどんどん進み、そのプライベートな空間にいる人間の気持ちは考えられなくなるようです。

 

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 ただ、上に引用した記事の問題点は、普段の夫婦生活・家庭生活がどうであるのかがわからないところです。私が思うに「私とお酒とどっちが大事なの?」という質問は非常に危険な匂いがします。もちろん、奥様の言われた言葉には「自分に心配や迷惑をかけてまで飲みたいものなのか」という気持ちがあるのでしょうが、「なぜそんなにまで飲むのかの原因を探る」という視点がないように感じられます。「なぜそんなにまで飲むのか」と疑問に思ったことはきっとあるでしょう。しかしそれが疑問のままであり「なぜそんなにまで飲むのか、全然さっぱり意味わからない!バカじゃないの?」となっているような気がしますし、もしそうなのであれば、それこそがアルコールに依存するようになってしまう原因ではないかと思います。

 つまり夫婦間のコミュニケーション不足。奥様に何を話してもわかってくれないだろうという絶望。あるいは、奥様にはちょっとこれは話せない・・というような悩み。「寂しさ」の正体です。お酒に逃げるようになる「前の段階」が存在するわけです。強迫的に飲むようになる前に、その原因を取り除くことはできなかったのか。

 ある種の自傷癖とも言われるアルコール依存症ですから、人のアルコール許容量や肝機能の数値を出す前に、まずはここに目をむけるべきなのです。医学的見地は大事ですし否定はしませんが、それならなぜその日のうちに泥酔する人間を退院させたのか。私は数字を盲信はしません。

 奥様に心を開いていろんなことを話せる関係であればお酒に逃げるようなこともなかったのではないのではないかと思ってしまいますが、ご主人の窮地に「私とお酒とどっちが大事なの?」という言葉を発してしまうようでは、あまり望めなかったのかなと感じられます。

 かといって奥様に全ての責任があるはずはないですし、もちろん一番の原因と責任は本人にありますが、友人でも同僚でも上司でも、なんなら部下でもいいから、心を開いて話せる人間が居れば状況は変わったのではないかと思います。

 山口達也の場合だと、なぜ呼び出したのが共演した女子高生だったのか。TOKIOのメンバーは多忙でダメだったか。マネージャーさんや後輩などの事務所関係者ではダメだったのか。一般人の友人はいないのか。元奥様ではダメだったのか。性的な欲求があったにしても、なぜ未成年だったのか。

 そして一ヶ月も入院して退院した当日であるにも関わらず、彼のもとには誰もいなかったのか。入院中の生活はどうだったのか。周りの人はお見舞いには来てくれたのか。

 それを考えると、彼の普段の人間関係のあり方を疑問視せざるを得ませんし、それはお酒以前の問題であるはずです。

 

 お酒に逃げる、という言い方をしましたし、よく使われる言い回しでもありますが、

お酒は逃げ場にはなり得ません。

 逃げて逃げて、お気に入りのお酒を取り上げられ、ではなんでも良いからお酒とひたすら量を求め、それも取り上げられると挙げ句の果てには料理酒なんかにも手を出し・・・となった先に最後に待っているのはもうどうすることもできない袋小路です。まさに言葉通り、お酒は言うまでもなく人間としての自由も取り上げられた四方を壁で塞がれた場で生きることを余儀なくされるでしょう。

 

逃げ場があるとすれば、それがバーです。

 逃げ場はお酒ではなく、人間のもと、ひいてはバーテンダーのもとです。
 実はバーの本質はお酒にはありません。お酒なんてその辺のコンビニでもスーパーでも売っていて、それこそ自宅で安く飲めちゃいますからね。

 

 バーの本質とは、バーテンダーを核とした空間、コミュニティの形成にあります。

 

 もう少しくだけた言い方をすれば飲み仲間の形成と言ってよいでしょう。仕事つながりでも学校つながりでもない仲間。一緒に飲むことを目的とした仲間というとあまりに限定しすぎですが、会えば飲む、または飲んでいる場で会う。そんな感じです。

 前に少し書きましたが、それは仕事等の利害がない関係であり、多少の恥をさらすことがあってもその関係以外には波及しないことが多いです。

 また、人には色々な顔があります。職場での顔、家庭での顔、近所づきあいでの顔、親としての顔、友人といるときの顔・・・。それぞれに「期待される顔」があり、人は無意識にそんな顔をしています。しかし、バーにいるとき、飲み仲間と飲んでいる時ははそれをしなくてもよいのです。そういう意味で「お互いに過度の期待をしない人間関係」とも言えます。ドライな表現になってしまいましたが、非常に楽でストレスのない関係です。

 だからこそ、そういう関係性の人にしか喋れないことはあるものです。大人になればなるほど。責任が増えれば増えるほど。有名になればなるほど。
 そしてそういう関係だからこそ、それに対して忌憚のない意見を言えたり、逆にうんうんとひたすら聞くということもできます。

 あるいは直接そういう悩み事を話さずともその場で他愛のないおしゃべり、本当に生産性のないくだらない会話、端からみたら無駄な時間に思えるしょうもない会話をしているうちに大した悩みではなく、なんとなく大丈夫っぽい気分になってくる、ということもあります。勘違いすべきでないのは、それは人と関わっているからそうなるのであって、直接お酒のおかげなのではなく、お酒はあくまで人とのコミュニケーションを援護するものでしかないということです。

 

 一方、バーにいらっしゃるお客様は多かれ少なかれ「美味しいお酒が飲みたい!」と思っていらっしゃるので、自然と美味しいお酒を飲むのに相応しい雰囲気を創り出す集まりになります。飲めればなんでもいいや!とは本心からはならないものです。アルコール依存症になると料理酒にまで手を出すと書きましたが、この方達はむしろ料理にさえ料理酒なんてまずくて使えるか!と開栓してから時間がたってしまった日本酒を使うくらいです(笑)

 だからバーに通っていると美味しさがわからなくなるまで飲む(しかも相応のお金を支払って)とか、アルコールが入って居ればなんでもいい、とにかく酒を!という事態にはならないものです。

 はっきりいうと、アルコール入ってればなんでもいいという方に出すお酒はありません。少なくとも私はそう思っています。

 

 もし「飲み仲間」も難しいのであれば、その時こそバーテンダーの出番です。
 バーテンダーとお客様というのは、お金をいただく側と支払う側なので利害関係者には違いありません。しかしだからこそ、お客様の健康問題をはじめとした「ネガティヴな要因でバーに来られなくなるような事態」が起こることについては神経を尖らせています。バーでお酒を沢山飲んだせいで依存症になったなどということは絶対にあってはなりませんし、そういうことがあれば売り上げがあがれば客がどうなってもよい店としての評価は免れ得ないでしょう。

 そして何より、「いらしたお客様が少しでも気分が良くなってお帰りになる場を提供する」というのがバーテンダーの一番の仕事です。これはどんなスタイルのバーであれ価格帯であれ地方であれ、共通することのはずです。

 いらしたお客様がマイナスの気持ちでいらしたならできればプラスに、0でもいい、マイナスがちょっとでも減ればいい。上機嫌で訪れたなら、それを維持したり、ちょっとプラスを上乗せできるようにしたり・・・あまりにプラスになりすぎて悪いことが起きないように注意を払いながら。

 多くのバーテンダーはそういう気持ちで仕事をしていると思います。なのでもし他に話し相手に相応しい方がいないときは、バーテンダーを頼っていただけたら幸いです。

 

 

さてこの記事を書く契機となった事件が起こったのが4月25日。その日から書き始めて書きたいことを盛り込んでいったらもう29日になってしまいました(汗)。そうしているうちに世の関心は山口メンバーから北朝鮮・韓国首脳会談へ。

もっとスピーディーにかけるよう心がけなければと思った次第でございます〜

次回はもうちょっと明るい?話題ができればと思います!