バーとお酒の入門講座

バー初心者の方を対象に、バーならではのマナーや楽しみ方、お酒に関する基本や雑学、豆知識を書いていきたいと思います。バーに興味はあるけれど、何だか最初の一歩が踏み出せない、そういう方の一助になれば幸いです。

ジンについて

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 さてクラフトビールとクラフトウイスキー、2つの前置きがありまして、

クラフトウイスキーについて - バーとお酒の入門講座

クラフトビールについて - バーとお酒の入門講座

ようやく今流行りのジンです。

 

クラフトビールからクラフトウイスキーの流れを経て、醸造所〜蒸留所が多く各地に建設されてきたのはもちろんですが、それ以上にクラフト〇〇が流行するうちに市場の目が既存の大手メーカーが造ってきた慣れ親しんだブランドよりも、面白い個性的な商品を追うようになりました。そのような状況下で今のジンブームは起きています。

 前々回のクラフトウイスキーの回の最後に書いたように、ウイスキーが熟成を終えて商品化できるようになるまでの間をしのぐ、すぐ売り上げを立てる手段としての商品がジンです。

 ワインなどとも違って収穫したての果実ではなく貯蔵された穀物や草根木皮から作るため、一年を通して原料を得ることができ、そしていくつかの例外はあれどジンには熟成期間が必要ありませんので休むことなく生産・出荷が可能なのです。

 

そもそもジンとは

 さてそんなジンですが一体どういうものなのか。現代のものはジャガイモなどの穀物を使用した蒸留酒を作り、そこにジュニパーベリー(杜松の実、ネズの実)を主とした各種の草根木皮を浸して成分を抽出し、更にもう一度蒸留して作るスタイルが主流です。

 最近はワイングラスやそれより小ぶりなテイスティンググラスでストレートで飲むスタイルも流行していますが、一般的にはジントニックやジンフィズ、あるいはカクテルの王様マティーニのベースとしての認知そして消費が多いかと思います。しかしそれが一体どういうものなのかということをプロ以外できちんと知っている人はさほど多くないように思われますのでそれをお話ししたいと思います。

ジンの起源と歴史

 ジンの歴史は17世紀のオランダにさかのぼります。1660年、オランダのライデン大学のシルヴィウス教授が解熱・利尿剤として開発したジュネヴァと言われる薬用酒がその起源と言われ、一般人にも広まって行きました。

 (※但しそれよりはるか以前の11世紀頃にイタリアの修道士がジンに必須のジュニパーベリーを使用した蒸留酒を作っていたという説もありこちらも有力です)

 それからほどなくしてイングランドで1689年に名誉革命が起こり、時のオランダ貴族オラニエ公ウィレムがウィリアム3世としてイングランド王に即位したことがきっかけで、オランダの製品であるジュネヴァがイングランドに伝わり、ジュネヴァを縮めてジンと呼ばれるようになりました。

 そして19世紀に入り1831年、アイルランド人のイーニアス・コフィーによって開発された連続式蒸留機が実用化されると、それがジンの製造にも応用され、アルコール度数が高くドライなものが作られるようになります。こうして現代までジンの主流である「ロンドン・ドライ・ジン」の原型が形作られました。

 そこからは革命的な変化はこれといって見られず、各メーカーが草根木皮の種類や蒸留回数などに変化をつけてそれぞれの個性を出しています。いわゆるボタニカルと呼ばれる薬草や香草の他に、キュウリや薔薇、緑茶、中国茶、はたまたグレープフルーツなど果実の皮など、実に様々な原料が使用されています。

 

 20世紀に入るとアメリカでカクテル文化が花開き、ジンは優れたカクテルベースとして前述のような王道カクテルに使用されることとなります。そして21世紀に入るまでジンはウォッカと並んでNo. 1カクテルベースのひとつとして誰もが知っているお酒になったと言ってよいでしょう。

現在と、これからのジン

 そして21世紀、今回のジンブームで注目されているのが前述の「ストレートで常温で飲む」という味わい方です。各社のクラフトジンは個性的な味わいのものが多いのでカクテルベースとして何かを混ぜて、あるいは何かで割って飲むよりはそのままで飲んだ方が本来の魅力が損なわれないということです。もちろん従来よりストレート、あるいはロックでジンを嗜む方は一定数いましたが、その場合は冷凍庫でキンキンに冷やしたものが好まれる傾向にありました。その方がジンの持つドライさが際立ち爽快感があったのです。しかしこれは全てのお酒に言えることですが、温度が下がると香りはあまり立ちません。温度が上がってくるにつれて香りが立ちのぼり、個性が表現されます。

 従ってそれにふさわしいグラスがより香りを引き立たせる効果のあるワイングラスやテイスティンググラスということです。私もまだそれほど経験はないですが、常温のジンをワイングラスで飲むのは非常に楽しいです。というのも、ワインやブランデーはブドウ、ビールとウイスキーは大麦などイネ科植物、ラムはサトウキビ、テキーラは竜舌蘭、というように主なお酒は水を含めても原料が片手で数えられる程度なのですが、ジンは何十種類も、しかも一風変わった原料も数多く使われていてその香りが閉じ込められているのですから、非常に複雑な香りと味わいを楽しむことができます。ワインやウイスキーも樽熟成や蒸留の過程で本来の原料にはない香りを得ることができますが、やはり原料由来の香りというのはジンならではのものだと言えます。

 ブームとはいえ、今のところこの飲み方は一部のジン好きの方しかしていないと思われますが、香りを立たせるといえばウイスキーで行われる「加水」(あくまで「水割り」ではなく、一滴〜お酒と同量の範囲で水を足す)という方法がありますので、そういった楽しみ方もこれから増えていくのではないでしょうか。また香りが重視されるということで、それと合う料理とのペアリングなども発案されていくことでしょう。果物が使われている場合はその果物を食べながら、なども良いですね。

 

 バーテンダーとしては、香りを楽しむストレートが流行とはいえ、あえてクラフトジンを使ったカクテルを研究していきたい気持ちです。流行はどうあれ、いつもチャレンジ精神は忘れずにいたいものですね。