バーとお酒の入門講座

バー初心者の方を対象に、バーならではのマナーや楽しみ方、お酒に関する基本や雑学、豆知識を書いていきたいと思います。バーに興味はあるけれど、何だか最初の一歩が踏み出せない、そういう方の一助になれば幸いです。

ブランデーについて

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ウイスキー、ワインときたので、今回はその中間??のブランデーについて語ってみましょう。※上の画像だけだとウイスキーと区別がつかないっていうね。まあグラスはブランデーグラスですが・・・

 

さてブランデー、どういうイメージでしょうか。

やっぱり暖炉の前のロッキンチェアーでバスローブでペルシャ猫を膝に乗せつつグラスを回しているダンディなおじさまでしょうか。岡田眞澄的な(もしかして最近の若者は岡田眞澄さん知りませんかね・・・??)。

 

そう、ブランデーというお酒は昭和で止まっています。
正確にはバブルが弾ける1991年(平成3年)あたりでしょうか。

ちなみにその頃からバーボンブームが起こり、ワインブーム、焼酎ブーム、シングルモルトブーム、ハイボールブーム、日本酒(地酒)ブーム、クラフトビール(地ビール)ブーム、クラフトジンブームと続き、それぞれがブーム以前よりも広く深く世の中に定着したように思います。一方で取り残されたブランデーはまるでバブルの遺物のように思っている方は少なくないでしょう。

 注目を浴びるとすればクラブ、キャバクラ、ホストクラブのような場所で高単価商品として有名銘柄が登場した時くらいでしょうか。

 もはや平成も終わろうとしている今日ですが、まさに平成はブランデーにとってはほとんど表舞台に出ることのない暗黒時代であったかもしれません。

 

ブランデーとは

 さてそんなブランデーとは一体何者なのか。冒頭でウイスキーとワインの中間と申し上げましたが、正体は「ブドウなどの果実を原料とした蒸留酒」なので、普段一般的に「ブランデー」と呼んでいるものは正確には「グレープブランデー」なのです。ブドウではなくリンゴを原料としていれば「アップルブランデー」となります。フランス北西部のブドウの生育条件の北限を超えた地域であるカルヴァドス地方のものが有名ですね。

 ブランデーという名前は、フランス語で「焼いたワイン」を指すヴァン・ブリュレ(Vin brule)と呼ばれていたものが、17〜18世紀にかけてオランダ人がブランデウェイン(Brandewijn)と直訳してイギリスに広め、それが縮められてブランデー(Brandy)となったとされています。蒸留することを「焼く」と表現するのは丁度、日本の「焼酎」と同じ発想であると言えそうですが、蒸留という共通した技術は用いているものの、全く異なる言語の国の異なる酒が同じ発想で呼ばれるのは不思議な感じがします(日本は当時鎖国中です)。

ブランデーの産地、品種

 産地としてはフランスのコニャック地方とアルマニャック地方がとても有名です。ともにワインで有名なボルドーのそれぞれ西と南に位置しており、コニャックはグラン・シャンパーニュ、プティ・シャンパーニュなどに分かれ、アルマニャックはバ・ザルマニャック、テナレーズ、オー・タルマニャックに分かれます。

 使用するブドウ品種はユニ・ブランと呼ばれるものが多く、ワインにすると酸味が強すぎ、糖度が低いためアルコールも弱いものができるのですが、ブランデーの原料としては酸味が強い方が良い香気成分を多く吸収できたり、アルコールが弱い分多くのワインを必要とするためかえって凝縮感のある仕上がりになったりと、ワインでの弱点がそのまま長所になるようです。

ブランデーの熟成とブレンド

ウイスキー同様、ブランデーも樽で熟成されて琥珀色を帯びます。
ここで注意したいのが熟成年数とその表記です。

ブランデーのラベルにX.O.とかV.S.O.P.と書いているのを見たことはあるでしょうか。これは熟成年数の目安の表記となります。

コニャックの場合は

V.S.・・・約3年以上
V.S.O.P. 、Reverve ・・・約5年以上
EXTRA、 NAPOLEON・・・約7年以上
X.O. ・・・約11年以上

 

そして厄介なのが、アルマニャックだと同じ表記でも年数が違います。

V.S.・・・約3年以上
V.O.・・・約5年以上
V.S.O.P.・・・約5年以上(平均熟成年数5~10年)
NAPOLEON・・・約6年以上
X.O.・・・約6年以上(平均熟成年数20~30年)



異なる熟成年数のものをブレンドしますが、一番若い樽の年数が表記に反映されます。

またコニャックでもアルマニャックでもない、ノーブランドのものはフレンチ・ブランデーと呼ばれますが、それらにも上記のような表記が用いられることはあるようです。
しかし厳格に規則があるわけではないので、上記のような年数が保証されているかは怪しいところです。

 

 ところで、どうもバブル期にブランデー全盛期を謳歌したおじさま達の中にはV.S.O.P.や NAPOLEONをブランデーの銘柄の名前だと思い込んでいる方々がいるようですが、それは誤りです。たまに「ナポレオンある?」「ブイエスオーピーある?」と言われます。それとわかりながらも一応「銘柄はご希望ありますか?」と聞くと「???」となり、あちゃーと思うわけです。確かに「サントリーV.S.O.P.」という銘柄は存在しますが・・・。

 

ブランデーのこれから

 そんな「おじさんのお酒」のイメージが強いブランデーですがもうそろそろブランデーが陽の目をみる日も近いのではないのかと思っています。なんとなくですが。

 まずそれぞれのお酒のブームが落ち着いてきたので、次は何かといった時に、そろそろ選択肢がなくなってきたのではないかというのがひとつ。お酒の種類でメジャーなものといえば後はテキーラとラムとブランデーくらいしか残っていません。テキーラはいまだにウェイ系、パリピさん達の間では定番で良くも悪くも流行とは少し離れた位置で定着していますし、ラムについては既に大流行していても良さそうなものですが、パイレーツオブカリビアンやワンピースといった海賊モノが2000年代にこれだけ人気を博したにも関わらずラム単体はなかなか流行りません。代わりにラムベースのカクテル「モヒート」が流行りました。

 

 ブランデーについてはウイスキーのハイボールが定番化したので、差別化を図ろうとするお店などがブランデーを使用した「フレンチハイボール」を試みたりしています。甘めのものが好きな人はこちらのほうが良いのではないでしょうか。またケーキなどのデザートとも親和性があります。

 コニャック・アルマニャックに代表されるフランスのブランデー以外のブランデーも注目です。私が知っているお店ではギリシャの「メタクサ」というブランデーが上品な甘さで大変人気があります。白い陶器に花柄のようのな装飾が描かれたボトルも目を引き、特に女性からの支持が高いようです。

 現在の「当たり前」を打破する手段のひとつとして、昭和に置き去りにされてしまったブランデーを起用しようという動きが、少しずつですが高まってきている気がします。